この記事では、外国人に日本語を教える方法や教材、教え方のコツなどを紹介します。
これから日本語教師を目指したい方、外国人に日本語を教える機会がある方は、ぜひ参考にしてみてください。
・外国人に日本語を教える方法
・外国人に日本語を教える場所や教材
・外国人と話す時や日本語を教える時の注意点とコツ
はじめに – 日本語と国語の違いは?
まず、外国人に教える日本語と、私たちが学校で学ぶ国語の最大の違いは何でしょうか。
それは、言葉を母語として学ぶか、外国語として学ぶかということです。
私たちが学校で学んできた国語は、多くは日本語を母語としてすでに身につけている人向けに教えられるものです。
一方で、外国人が学ぶ日本語は、どちらかというと私たちが英語やフランス語などを学ぶときと同じような感覚で、日本語を母語としない人に、2番目、3番目の外国語として教えられるものであるという点が大きな違いです。
どうやって外国人に日本語を教える?
日本語の教え方には、様々な方法がありますが、ここでは大きく分けて2つの方法を紹介します。
1. 直接法
日本国内の多くの日本語学校や専門学校では、英語や中国語などの他の言語(「媒介語」と言います)を介さず、「日本語で」日本語を教えるという方法が採用されています。
これを「直接法」と言います。
直接法のメリットは、以下のようなものが挙げられます。
・学習者の使用言語が分からなくても教えられる
・学習者が日本語を聞いたり話したりする機会が多くなる
・多国籍のクラスでも、平等に教えられる
日本国内の日本語学校や専門学校の場合、中国やベトナムなど、様々な国籍の学習者が1つのクラスに在籍していることが多いため、この教え方がよく使われます。
「初めて日本語を学ぶ外国人に、どうやって日本語を教えるの?」と思う方も多いと思いますが、そこが日本語教師の専門性の部分の1つと言えます。
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2. 間接法
直接法に対して、学習者の母語や英語など、他の言語を使って日本語を教える方法を「間接法」と呼びます。
学校教育で英語を学ぶとき、私たちの多くは「日本語で」英語を教えてもらっていたはず。
つまり、これは日本語という媒介語を使って、間接法で学んでいたということになります。
海外の日本語教育機関等での日本語教育の場合、学習者の国籍や母語が同一であることが多いため、この間接法が採用されることが多くなっています。
間接法のメリットは、以下のようなものがあります。
・文法や語彙などの説明が伝わりやすく、時間も短縮できる
・学習者の誤解や聞き逃しを防ぎやすい
・学習者からの発言や質問の意図が正しく伝わりやすい
ただし、こちらの教え方の場合、日本語教師は、学習者の母語で不自由なくコミュニケーションができるだけの語学力があって、初めて授業ができるという前提があります。
どんな教材を使えばいいの?
このセクションでは、日本語教育で使われている教材の一例を紹介します。
日本語学習用教材には様々なものがありますが、ここでは日本語学校やオンライン授業等でよく使われている本を、シラバス(教科書の構成、内容)ごとに分けて説明します。
「何から教えればいい?」という疑問をお持ちの方は、ここで紹介する各シラバスの教材やウェブサイトを見て、学習者に合ったものを選んでみてください。
1. 文型・構造シラバス
「文型シラバス・構造シラバス」とは、学習者に教える文法項目を設定して、それに沿って教科書が構成されているシラバスです。
例えば、「~したことがあります」「~ために…」など、課ごとに学習する文型が決められていて、その文型を柱に課の勉強や練習が進んでいきます。
様々な文法を網羅的に勉強できるのがこのタイプの本の特徴です。
簡単な文法から難しい文法へと徐々に難易度が上がっていく形式になっていることがほとんどで、「文型積み上げ式」の教科書とも呼ばれます。
日本の中学校や高校の英語文法教育で使われている本も、多くがこの形を採用しています。
このタイプの日本語教材の代表的なものが、恐らく最も多くの日本語教育機関で使われている「みんなの日本語」です。
【スリーエーネットワーク】みんなの日本語初級Ⅰ 第2版 本冊https://www.3anet.co.jp/np/books/2300/
2. 場面シラバス
「いつ・どこで・誰と話す」といった場面や状況をベースに教科書の各課が構成された教材です。
一例を挙げると、「掲示板を見て友達と話す」「駅で落し物をして駅員さんと話す」など、場面やシチュエーションを柱に、その場面で使える文法や語彙表現を身につけていくタイプのシラバスです。
日常生活でよく遭遇する場面から教科書が進んでいくので、短期的なコミュニケーション力養成に適していると言えます。
このタイプのシラバスの代表的な教材としては、「できる日本語」シリーズが挙げられます。
【アルク】できる日本語 初級 本冊
https://www.alc.co.jp/entry/7008004
3. can-doシラバス
その名の通り、「できるようになること」をもとに教科書が構成されているタイプのシラバスです。
例えば「自分のスケジュールについて話せる」「友達と好きなものや趣味の話ができる」「レストランで注文できる」など、その課を勉強したら「できるようになること(=can-do)」を中心に学習が進んでいく本です。
このシラバスは、文型・構造シラバスとは異なり、語彙や文法の知識量ではなく「何がどれぐらいできるようになるか」に重きが置かれています。
「この課を勉強すればできるようになること」が明確なので、学習者もモチベーションが維持しやすく、なおかつ日常生活に直結する学習ができるという点が優れていると言えます。
日本語に囲まれた環境で生活していくうえで必要とされることの多いcan-doから進んでいくのが基本的な構成です。
(例えばメールやネット、手紙などの読み書きも含めた)コミュニケーション活動に重きを置いて作られています。
このタイプの教材の代表的な例は、「いろどり 生活の日本語」です。なお、この教材は国際交流基金のウェブサイトから、無料でダウンロードできます。
文法説明等も翻訳付のものが用意されているので、初心者の方でも安心して使える教材です。
【国際交流基金】いろどり 生活の日本語
https://www.irodori.jpf.go.jp/
どこで外国人に日本語を教えられる?
次に、外国人が日本語を学んでいる主な場所を簡単に紹介します。
1. 日本語学校
日本語学校は、留学生や生活者など、様々な目的を持った外国人学習者が集まるところです。
留学生の多くは、来日後はまず日本語学校に入学し、日本語を学びながら日本の大学・専門学校への進学準備や、日本企業への就職準備をします。
多くの外国人留学生が日本に来て初めて在籍するのが、日本語学校ということになります。
日本での生活者は、家族や自分の仕事の都合などで来日し、生活に日本語が必要になって勉強を始めることが多いです。
初級~上級まで様々なレベルの学習者がいて、年齢層も10代から高齢者まで幅広いのが日本語学校の特徴です。
なお、留学生を受け入れている「法務省告示校」と呼ばれる日本語学校で日本語教師として働くためには、一定の資格が必要です。
詳しくはこちら↓
2. 大学や専門学校
大学や専門学校で日本語を学ぶ外国人は、上述の日本語学校や母国の学校で、ある程度日本語を勉強した人がほとんどです。
大学等への入学には日本人と同様に入試があり、その受験資格や合格基準として、一定の日本語能力を持つことが条件とされていることが多いからです。
このような学校では、外国人学習者はそれぞれの専門分野を学びながら、より高いレベルの日本語を学んだり、JLPT(日本語能力試験)の試験対策授業を受けたりします。
ただし、専門学校の中には、大学や大学院進学のために、日本語を引き続き学べるところもあります。
教師として教える場合は、基本的にこのような学校で働くのに資格は必須ではありませんが、現実的には専門学校では告示校と同様の資格が必要だったり、大学で教える場合は修士以上の学歴が求められたりすることが多くなっています。
3. オンライン授業
インターネット上には、オンラインプラットフォームと呼ばれる、日本語教師がオンライン講師として登録して、様々な国にいる外国人がニーズに合った先生を選んで、そのレッスン(多くは1対1)を好きなときに受けられるサービスがあります。
将来日本へ留学したい人や、趣味で勉強する人など、その学習目的は様々です。
オンライン日本語教師は、基本的には資格が要らないのが普通です。
コロナ禍で外国人の入国が制限された時期から、オンラインで日本語を教える人が急激に増えたと言われています。
4. プライベートレッスン
学習者が個人レッスンを希望する場合や、様々な理由で学校に通えない場合などには、1対1でプライベートレッスンを行う場合があります。
仕事や家族の都合等で日本に住んでいる知り合いの外国人に頼まれて、個人的に教える場合が多いようです。
レッスンをする場所はカフェや学習者の自宅などです。
こちらも個人と個人のやり取りなので、資格は要らないことがほとんどです。
また、時給や授業内容は当人同士の話し合いによって決まります。
家庭教師のような感じですね。
5. 企業
令和4年10月の厚労省の調査によると、日本で働く外国人労働者数は約180万人となっています。
さまざまな在留資格(ビザ)で働いている人がいるので、日本語能力があまり高くない場合も多くあります。
そのような場合に、日本語教師が企業内の研修で日本語授業を担当したり、就職前の一定期間、日本語を教えたりする場合などがあります。
技能実習生(今後廃止に向かっていく可能性が高い)や特定技能ビザで働く人などが主な対象です。
ベトナムやフィリピンなど東南アジアの人が多くなっています。
6. 小中高などの公教育
帰国子女や日本に住んでいる外国人の子ども、両親どちらかが外国人である外国ルーツの子どもなどを対象に、公教育でも一部日本語指導が行われています。
・日本人でも海外にいたので全く日本語が話せない
・両親の仕事の都合で日本に来て、日本の小学校に通っている外国人
・会話はできるが読み書きはできない
など、様々な事情で日本語指導が必要な児童生徒は、ブラジル、フィリピン、中国などの人を中心に、ここ数年は増加傾向が続いており、日本語指導ができる人員の不足が叫ばれている現状もあります。
7. 海外の日本語教育機関
海外の大学や語学学校などでも、日本語教育は広く行われています。
国際交流基金(JF)の2021年の調査では、世界133か国8地域で日本語教育が行われており、海外における日本語学習者数は、400万人近くにのぼっています。
アジアの国を中心に、世界中で日本語を教える場所と機会があります。
また、オンラインで日本から授業を提供する場合もあります。
8. ボランティア
日本の各地にある国際交流センターなどでは、地域に在住の外国人向けに、日本語を教えるボランティアが募集されています。
オンラインで教える場合もあるし、対面で教える場合もあります。
・日本語学校で学んでいるが、もっと日本人と会話する機会がほしい
・現状の生活では、日本語を使ったり学んだりする機会がない
・日本語学校に行くには経済的に厳しい
などの理由で、ボランティアでの1対1レッスンを希望する外国人は少なくありません。
本格的に日本語教師になる前に、養成講座に通いながらボランティアとして経験を積む人も多くいます。
初めて日本語を教える、日本語教師初心者という人にもオススメです。
授業のやり方や内容は、【4】のプライベートレッスンに近いです。
外国人はどうして日本語を勉強するの?
外国人学習者の学習目的は多岐に渡ります。以下にその例をいくつか紹介します。
1. 日本で学習している人の動機
・JLPTに合格したい
・大学等への進学に必要な知識と能力を身につけたい
・日本人相手のビジネスで使える日本語力を身につけたい
・日本で生活できるコミュニケーション能力がほしい
・日本語の会話力を向上させたい
・日本人の友達がほしい
それぞれの目的や事情で日本に来ている外国人学習者は、日本語学習自体が目的というよりは、日本語を学ぶことによって日本で何かができるようになりたいとか、大学・専門学校への進学や日本での就職など、希望の進路を実現したいといった理由で日本語を勉強している人が多いと言えます。
2. 海外で学習している人の動機
・日本に旅行したい
・日本人の知人や家族と日本語でコミュニケーションしたい
・好きな日本文化やサブカルチャーをより深く理解したい
・将来日本に留学したい/日本で就職したい
・母国にある日系企業に就職したい
海外で日本語を学ぶ人は、国内の学習者と同様に日本での大学進学や、日本企業・日系企業への就職を目指している人もいますが、アニメや音楽、ファッションなどのサブカルチャーや、日本の伝統文化に興味があり(またはそれが趣味であり)、その文化や趣味をより深く理解するために日本語を学ぶという人も多くなっています。
日本語を勉強して、いずれはそれらを本場日本で実際に見てみたいと口にする学習者も少なくありません。
教え方・外国人との会話のコツは?
では、実際に外国人に日本語を教えるときには、どのようなことに気を付ければいいのでしょうか。
どの教え方・場所でも共通して覚えておきたい「日本語を教える時のポイント」をいくつか紹介します。
1. 外国人に伝わりやすい日本語で話す
普段私たちが日本人同士で話すときと同じスピード・言葉遣いの会話を不自由なく理解できる外国人はとても少ないです。それができないから日本語を勉強しているとも言えます。
外国人に言いたいことを正しく伝えるためには、それなりの工夫とコツが必要になります。
外国人に伝わりやすく話すコツは、以下のようなものが挙げられます。
(1)不要なカタカナ語の使用は避ける
カタカナ語は
・英語等の元の言葉と意味が違うので誤解しやすい
・元の言葉と発音が違うので聞き取りにくい
・カタカナ語より日本語の言葉の方が知っている/理解しやすい
などの理由で、外国人とのコミュニケーションで多用すると意図が伝わりにくくなることが多いです。
以下は改善方法の一例です。
例1
この本はベストセラーだ。
この本はよく売れている、人気がある。
例2
その時間はラッシュアワーだ。
その時間はとても人が多い。
(2)難しい漢語の使用は避ける
外国人の日本語学習に使われる教材においては、例えば「学習する」よりも「学ぶ」、「収集する」よりも「集める」のように、漢語より和語の方が初級での出現率が高くなっているため、学習者は和語の方が知っているし、理解しやすい傾向があります。
中国などの漢字圏の学習者は、書かれたものを見れば漢語の方が理解しやすいこともありますが、話していてふと出てきたときに、どちらの方が理解できるかと言えば、和語の可能性の方が高いと言えるでしょう。
こちらも改善方法の一例を紹介します。
例1
高台に避難してください。
高いところに行ってください。
例2
今月末で退職します。
今月の31日に仕事をやめます。
(3)長くて複雑な文を避ける
ある程度日本語レベルの高い外国人でも、「から」「のに」「ても」「たら」などの接続助詞がいくつも含まれた長い文で話されると、正確に意図を理解するのはかなり難易度が高いです。初級の学習者ならなおさらです。
これを解決するためには、できるだけシンプルな文(1文に主語+述語が1つずつ)で話し、文と文の繋がりは「でも」「だから」「それから」などの接続詞を強調して話すという方法が有効です。文と文の関係も分かりやすくなります。
以下は改善例です。
例1
週末、沖縄に旅行に行ったんですが、台風が来ていて帰りの飛行機が欠航したので、こっちに帰ってくるのが1日遅れたうえに、泊まれるホテルが見つからなくてとても大変でした。
週末、沖縄に旅行に行きました。
でも、台風が来ていて帰りの飛行機が飛びませんでした。
だから、こっちに帰ってくるのが1日遅れました。
しかも、泊まれるホテルが見つかりませんでした。
それで、とても大変でした。
2. 学習動機と到達目標を明確にする
実際に日本語を教え始める前に、外国人学習者(または学校や企業のクラス運営者)に、以下の点をしっかり確認しておきましょう。
・学習者はなぜ日本語が学びたいのか
・どんな日本語が学びたいのか/練習したいのか
・日本語を勉強してどうなりたいのか
これを事前に明確にしていないと、学習者と教師の意図が合わず、授業がちぐはぐになってしまいます。
授業を受けたあとで、「最終的にどうなりたいのか」「何がしたいのか」という到達目標をできるだけ具体的にしておき、そこに向かって毎回の授業の目標設定や内容構成をすると、お互いに何をするべきなのかが明確になります。
もちろん、個人レッスン等では、授業を進めていく途中で路線変更をしてもいいでしょう。
お互いにストレスなく、満足のいく授業にするためには、最初だけではなく、定期的に学習者のニーズや理解度などを確認していくことが大切です。
3. 相互コミュニケーションを重視する
語学学習では、「教師が一方的に話し、学習者は聞くだけ」の授業では、学習者がしっかりその言葉を「使えるようになる」ことは難しいとされています。
学習者にいろいろ質問をしたり、意見を言ってもらったり、逆に積極的に質問してもらえるような工夫をして、学習者と会話しながら、インプットとアウトプットをバランス良く体験できるようにすることが大切です。
語学学習の大前提は「その言葉が使えるようになること」です。
日本語学習者も、それぞれの向かう先は違えど、日本語でコミュニケーションができるようになりたい、と考えている人が大部分です。
積極的に学習者の発話を引き出せるように、工夫してみてください。
まとめ
「外国人に日本語を教える」ことについて、教え方や教材、学習目的や教える時のコツなどを簡単に紹介しました。
「外国人に日本語を教えてみたい!」
「将来日本語教師になりたい!」
という方の参考になれば幸いです。
さらに詳しく知りたい!という方は、ぜひ当講座の無料説明会にご参加ください。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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